中国式管理ブログ

ー被管理者のための管理の教科書ー

被管理者のための管理の教科書

 安倍元総理の働き方改革の効果は正直うまく理解できないが、おかげで我々SEと言われる人間は、お客様が見積に寛大になり、ここ5年ぐらいは過少スケジュールは少なくなり、残業が減って正当な勤務時間で働けるようになり、正常に仕事ができるようになったと思う。

 ある意味、労働者の国から来て、働く人のためになりたいという思いに馳せ、管理に関する本を翻訳するという自分の初心は叶ったようにも思う。

 しかし今や、世の中でパワハラが叫ばれ、管理者がそのライン引きができず、業務指示に怖気付く。また、巷では、ケースバイケースではあるが、パワハラと言い出せば、それで通り業務に滞りが生じる行き過ぎるケースもあると聞く。

 果たして、この状況が本来の管理にとっての解決となるだろうか? 

 アメリカの管理に関する書籍は必ずと言っていいほど、管理について論じ、管理者のなすべきことについて記述されている。我々も出世すれば、多くの人を管理することができ、もっと大きな仕事ができると思うようになってきたと思う。しかし、いざその立場に立った時に、そこに記載されている方法通りに人を動かせず、混乱してしまう。「アメリカ式管理の強み」の記事で書かせて頂いたように、欧米の科学というのは、物事から枝葉末節を切り落として、万人ができるようにドライフルーツ化して理論を提供してきている。我々はその場その場の状況に合わせて、唾液で果物に戻さないと利用することができないのである。

 しかし、管理は「管理者のためのもの」だとは思い込んではいないだろうか?管理する側がいれば、管理される側もいるはずで、管理という一つの舞台に2大主役なのに、管理者だけがスポットライトを浴びるのはドラマは盛り上がるでしょうか?

 世の中を考えても、管理者がせいぜい2割で、8割が被管理者ではないだろうか? であれば、管理に関して反対側に立たされたもう一人の主役、管理される被管理者も理論武装、教育していく必要はないだろうか? 

 「中国式管理」という本には、被管理者にとってそのようなスキル、理論があり、その教科書になりうると考えたので、私はその翻訳に努めてきたと思う。被管理者が管理を活用できるようになり、自分で自分の身を守れるようになり、そして、いずれの日か被管理者が自分の働きで、管理者を助けるようになったら、みんなが幸せに暮らせるのではないかと思う。

ピラミッド型組織では、「顧客至上」とは言えないわけ

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 ピラミッド型組織では、従業員が 縄でしっかり縛り上げられた粽のように、身動きが取れないが取れないばかりでなく、それぞれの潜在能力を発揮できない可能性がある。

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  一番よく顧客と接触するのは従業員なのに、末端にしっかり縛り付けられていては、顧客のために何かのサービスをすることはできず、口先で叫んでみるしかなくなる。顧客がさらにその下に位置させられるのだから、当然「顧客至上」とは言えない。

樹木状の組織精神

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 日本では、往々にして、我々はチームを忘却の彼方に置き、みんなが横一列に並んで、それぞれの目標に向かって突撃していって、プロジェクトを完成させようとする。その実は、一人ひとりが孤独で悶々と進まない日々を過ごすのが現状だが。乃木大将以来変わっていない。 

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  最も優秀、最も俊敏、最も有効な組織として「天地自然」を挙げ、それを経営するものを「天」として挙げるところが、はっとさせられる。

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  小さいながらも全ての機能を持つ樹木。根・幹・枝葉は、分担もすれば協力もし、樹木をすくすくと成長させる。

  雲は雨と露を施し、葉に思う存分に水分を吸収させる。地下水源は水分を提供し、根に下から上へ供給できるようにさせる。それぞれが必要とするものを取り、それぞれが持っている能力を尽くす。

解消--解消の後の実施

 解消の働きは、「大きな問題は縮小させ、小さな問題は解消させる」ことにあ

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 責任者は自分で解答を提起すると、往々にして問題を大きくしてしまう。役職が高ければ高いほど、みんなはその人の解答を重要視してしまう。そして気に入らなければ、それを有名無実にして、無力することで、効力を発揮させないようにすることができてしまう。

 部下に解答を提起させ、上司が冷静に傍観することで、解答を得る以外に、「人」的な面においても多くの障害を解消できる。 

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 部下は尊重を受けたので、腹を割って分析を進め、最も突破しにくい難関はどこにあるか、どのように処理すれば半分の労力で倍の成果を挙げることができるかを指摘するしかない。解答の実施過程も非常に順調になるように、問題を「解消」させてしまい、また発生し得る後遺症も減少させることができる。

 解答が適切で、実施が簡単になり、解消の効果もさらに増加させることができる。

 また、奇想天外な考え方を持ち出してくれる。しかし、部下の心理をしっかりとらえ、応用しているなあと思います。

解消--上司が問題を提起、部下が解答を探すという方法

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 みんなを一時的にある焦点に集中させるために、問題を解決せず、放置する。

 問題を次の階層の責任者に投げて智恵を絞ってもらう。問題は上の方から提起してこそ、みんなは重視することができる。下の方に渡して智恵を絞ってもらってこそ、理想的すぎることはない。問題の解答にあまりにも高すぎる期待を寄せ、そのために非常にがっかりするほどの失望を招くことはない。

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 上司は問題を提起し、部下は解答を探す。上司は部下を尊重するならば、部下も上司のために配慮すべきである。このように上から下へ、下から上への気遣いだけで、問題の大半はすでに解消済みである。

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 部下に合理的な調整時間を与えられることは、まさに上司が豊かな実務経験を持っている最良な証拠であり、部下を最も納得させることができる。

  ユニークなアイデアを、上司と部下双方、行動と心理の両側面から、いかんなく披歴していると思う。

解消--後遺症という視点

  中国人の二から三を見出す智恵は、我々に「解決する」と「解決しない」の間に、二合法的な道筋を見つけ出させた。すなわち「解消」である。

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 道路は広く作れば作るほど、渋滞の状況はひどくなる。ゴミは早く片付ければ片付けるほど、ゴミの処理がさらに困難になる。資料のコピーは便利になると、みんなはタイトルだけを見て、内容を見なくなってしまう。これらを初めて見たときの興奮と、面白さは今でも覚えています。

 後遺症という着目は、実にユニークで、このように考えると、物事が解決したとき、我々に残るしこり、後味の悪さもつじつまが合うような気がします。